第五期(2020-2022年度)共同研究

1. 『マルチ言語版絵巻物による日本常民生活絵引』編纂共同研究

共同研究の目的

『マルチ言語版絵巻物による日本常民生活絵引』全5巻のうち、21世紀COEプログラムにおいてVol.1/ Vol.2を、センター第一期共同研究においてVol.3を刊行した。その後、2018年3月に第4巻本文編(英語)を刊行した。本研究の目的は、3年後を目途に、完訳版全5巻を刊行することである。この編纂事業を通して、歴史学・民俗学・人類学・文学など、様々な分野の方々が全5巻の完訳本に収められた日本の「常民生活」のあり様を研究の参考にしてくれることを期待している。

共同研究の分担

研究代表者 ジョン・ボチャラリ
共同研究者 鈴木陽一、小熊誠
研究協力者 何彬、 君康道、李利

2. 中国近世・近代における生活・風俗の研究

共同研究の目的

第四期の共同研究「第二期『東アジア生活絵引(中国江南編)』編纂のための基礎作業」にて取り組んだ活動をベースとしつつ、中国近世・近代における生活や風俗のあり方について検討を行う。検討に当たっては、「営業写真」を中心とした各種図像資料を中心に据えることとする。「営業写真」は『図画日報』に連載された作品であり、20世紀初頭の上海における様々な職業に絵・文をもって解説を加えたものである。多様な職業について細部まで表現した本作品は近代社会へと移行しつつあった当時の中国の生活・風俗を把握するには絶好の非文字資料であり、これを素材として行われる検討は中国社会の日常に対する私たちの理解を一層豊かなものへと導こう。
なお、検討に当たっては「営業写真」のキャプションの分析だけにとどまらず、各種絵画資料や写真資料との比較・検討も並行して行う。こうした作業を通じて、より正確な資料内容の把握が可能になると考えうる。

共同研究の分担

研究代表者 松浦智子
共同研究者 鈴木陽一、中林広一
研究協力者 山口建治、吉川良和、大木康、厳明、王京、張韜

3. 〈メディア〉と〈身体〉から見る20世紀ヨーロッパのポピュラー・カルチャー

オペレッタ『こうもり』ポスター
踊るロイ・フラー

共同研究の目的

19世紀末から出現したとされる大衆社会において、出版や電信などのテクノロジーの発達に伴い「ポピュラー・カルチャー」が生起していく。そこにはイメージの流通という側面とともに、舞台芸術・スペクタクルに顕著な、身体の新しい表現も見られる。これまで視覚資料から近代都市の表象分析を行ってきたが、本研究では、20世紀を中心としてメディアと身体の関係を研究していく。ヨーロッパがそれまで培ってきた民衆文化は、どのように「ポピュラー・カルチャー」に受け継がれ、また変容を被ったのか、潜在的なものであるイメージと、直接的な顕現である身体は、矛盾しつつもどのように合流していくのか、ドイツとフランスを中心に考えていきたい。これまで検討してきた絵画・版画・写真をはじめとした①図像資料とともに、舞台や映画の中で見られる②身体技法の分析も試みることで、共同研究で見過ごされがちであった観点を導入する予定である。

共同研究の分担

研究代表者 熊谷謙介
共同研究者 ステファン・ブッヘンベルゲル
客員研究員 小松原由理
研究協力者 田中里奈

4. 東アジア開港場(租界・居留地)における都市の発展と建築調査

共同研究の目的

 東アジア開港場(租界・居留地)を巡った日本人の諸活動については、いままで上海を中心とした日本人居住地域を選定し、研究活動を展開してきたが、今回の第五期に当たっては、上海の他に青島と広州を加え、華北、華中、華南の都市の発展と租界の建築を比較検討する視点を確保したい。
 とくに青島では中国海洋大学、広州では広州外語外貿大学の協力を得ながら、日本人関連の領事館、銀行、学校、紡織会社などの歴史と建築に関連する調査を実施したい。いままでの共同研究で発掘できた日本外務省外交史料館、上海市檔案館、台湾中央研究院の資料、各種の新聞(North China Herald、申報)、雑誌(Far Eastern Review、『支那事変画報』、『写真週報』)、絵葉書(神奈川大学非文字資料研究センター所蔵の近藤恒弘コレクション)、写真集なども引き続き活用する。

共同研究の分担

研究代表者 孫安石
共同研究者 内田青蔵、村井寛志、彭国躍、須崎文代
客員研究員 菊池敏夫、大里浩秋
研究協力者 冨井正憲、田島奈都子

5. 「帝国日本」境界の祭祀再編と海外神社

百人御物参の再現イベント。背後の建物は復元された首里城正殿

共同研究の目的

 近代日本はその領域を拡大しながら、植民地や占領地などを獲得していった。最初に領土と位置付けられた沖縄では伝統的な祭祀空間を再編し、新たに獲得した植民地などでは台湾を皮切りに海外神社を創設していった。大日本帝国として支配領域では地域の祭祀が再編されたほか、多くの神社が創設された。海外神社は外へ広がっていく「帝国日本」の広がりを示すものであり、「外地」と「内地」の境界では沖縄に象徴されるような祭祀再編などとなってあらわれた。海外神社や祭祀再編の事例から、「帝国日本」の有り様が浮かび上がる。
 本研究は「海外神社」班の視点と成果を受け継ぎながら、近代日本の「内地」と「外地」の境界としての近代沖縄における祭祀再編と神社の動向を踏まえ、あらたに北海道・樺太などの事例なども加えていきたい。そして、「帝国日本」における神社や祭祀空間、祭祀再編などの持っている意味を考えたい。
 領域としては景観や環境、図像資料とする。方法としては「帝国日本」の祭祀空間の跡地や関連図像などの整理収集と分析から、その意味を考えていく。共同研究の対象は、沖縄のほか内地外地の境界とされた地域とするが、海外神社の前史との問題意識からもCOE時代からの海外神社研究も副次的に継続する。特に、これまでの成果を出版物(写真集や共同研究論文集)で発信するほか、データベースの構築を行う。

共同研究の分担

研究代表者 後田多敦
共同研究者 小熊誠、坂井久能
研究協力者 津田良樹、中島三千男、前田孝和、菅浩二、加治順人
客員研究員 稲宮康人、渡邊奈津子、松山紘章、加藤里織

6.非文字資料の流通過程における諸問題を解決するための機械学習やブロックチェーンなどを応用した基盤技術に関する研究

共同研究の目的

非文字資料研究において研究者と一般の資料提供者が協力して資料の収集整理を行い、その研究成果を社会に発信し還元するためには、「資料の関連性や作業内容に即した検索とマイニング」、資料提供者や研究者の個人情報や重要情報、著作権の管理、資料提供や作業の対価やインセンティブとなる「多様な価値観に基づく地域通貨的価値交換」が必要となる。本研究では、「知識とサービス、物の流通と価値交換」、「知識とサービスの検索とマイニング」、「個人情報や重要情報、著作権の管理」で必要な基盤技術に機械学習とブロックチェーンなどを応用する。具体的にはアクセス制御で必要な資料間の関係性や電子透かしで必要な画像固有の情報の抽出に機械学習を利用したり、流通過程のコンテンツの作成、登録、利用、譲渡、二次利用などの時系列をともなう事象の発生をブロックチェーンを利用して信頼できる第三者を仮定することなく行うことなどが挙げられる。

共同研究の分担

研究代表者 木下宏揚
共同研究者 能登正人、佐野賢治、森住哲也
客員研究員 宮田純子
研究協力者 小松大介

7. 戦時下日本の国策紙芝居研究

『進め一億、火の玉父さん』
大政翼賛會宣傳部作 ; 小川武繪畫.
『敵だ!倒すぞ米英を』
大政翼贊會宣傳部作 ; 近藤日出造画.

共同研究の目的

 本研究は、戦時下国策紙芝居の図像、担い手、地域での上演などの実態分析などを通して、戦時下大衆文化の構造や機能を検証し、戦時体制の特質を再検討することを目的とする。具体的には、第四期の成果『国策紙芝居からみる日本の戦争』(勉誠出版、2018)を継承しつつ、未発見の紙芝居資料の発掘に努めるとともに、さらに分析を深め、より広い視角から多様な問題を深めることが課題である。たとえば第一には、拠点の一つであった北海道紙芝居など地域での活動を明らかにすること。こうした国内各地域における担い手や上演の機能分析は、継続的な課題となっている。第二には、台湾で着手した植民地紙芝居の分析を、朝鮮半島や中国占領地、さらに東南アジアなどに拡張すること。第三は、国内・植民地を通して、同時代の大衆文化(映画・演劇・写真・漫画など)との関係を比較検討すること。こうした成果を、研究会・シンポジウムなどで共有しつつ、新たな研究成果のまとめを展望したいと考えている。

共同研究の分担

研究代表者 安田常雄
共同研究者 大川啓
客員研究員 大串潤児、森山優
研究協力者 小山亮、新垣夢乃、松本和樹、原田広、鈴木一史、富澤達三