研究活動の紹介

研究活動の紹介

21世紀COEプログラム「人類文化研究のための非文字資料の体系化」においては、「図像」、「身体技法」、「環境・景観」の三つの事象に関する資料化、解析法の開拓、成果の発信に大きな成果を挙げることができた。

非文字資料研究センターは、21世紀COEプログラムの内容を継承・発展させるとともに、当初計画で目標に掲げながら達成せずに残した課題の実現を目標として、共同研究活動を推進している。

共同研究

第1班 マルチ言語版絵巻物による日本常民生活絵引の編纂

第1班 マルチ言語版絵巻物による日本常民生活絵引の編纂

マルチ言語版絵巻物による日本常民生活絵引

共同研究の目的

 『マルチ言語版絵巻物による日本常民生活絵引』全5巻のうち、21世紀COEプログラムにおいてVol.1/ Vol.2を、センター第一期共同研究においてVol.3を刊行した。その後、2018年3月に第4巻本文編(英語)を刊行した。本研究の目的は、3年後を目途に、完訳版全5巻を刊行することである。この編纂事業を通して、歴史学・民俗学・人類学・文学など、様々な分野の方々が全5巻の完訳本に収められた日本の「常民生活」のあり様を研究の参考にしてくれることを期待している。

研究期間 2026年度~2028年度(3年間)

研究班メンバー

班代表(客員研究員) ジョン・ボチャラリ
研究員 後田多敦
第2班 ヨーロッパにおけるグラフィックノベル研究-歴史記述・メディウムの混交

第2班 ヨーロッパにおけるグラフィックノベル研究-歴史記述・メディウムの混交

共同研究の目的

これまでヨーロッパ班は身体表象とジェンダー表象を軸に考察を続け、図像資料や映像資料を中心に集成・分析を行ってきたが、『ドイツカバレットの世界—世界のキャバレー文化』(2026)でいったんプロジェクトを完了し、新たな課題としてグラフィックノベル研究を行う。グラフィックノベルは日本のマンガともアメリカのコミックスとも異なる視覚芸術として近年研究の対象となり始めている半面、国ごとに扱われ文化的、美学的な面を強調されるきらいがあった。非文字資料研究として本班では、文字と形象(非文字)との関係に着目しつつ、20世紀の両大戦や戦間期というヨーロッパの激動の時代をグラフィックノベルがどのように表象したかを、ドイツ語圏とフランス語圏の両方から注目する相対的視点をとりたい。また、グラフィックノベルは歴史やフィクションといった物語のみならず、他ジャンルの芸術作品をアダプテーションする場合もあり、かつての紙芝居にも比した啓蒙的・大衆宣伝的なメディアということもできる。こうしたグラフィックノベルの多層性を、個々のメンバーの専門を生かして浮かびあがらせていきたい。

研究期間 2026年度~2028年度(3年間)

研究班メンバー

班代表(研究員) 熊谷謙介
研究員 ステファン・ブッヘンベルゲル、角山朋子
客員研究員 小松原由理、田中里奈
第3班 東アジア開港場(租界・居留地)における非文字メディア資料の研究

第3班 東アジア開港場(租界・居留地)における非文字メディア資料の研究

長井暁 戦時画報・雑誌コレクション
近藤恒弘・久義 天津関連資料コレクション

共同研究の目的

東アジア開港場(租界・居留地)の都市で発行された絵葉書、写真、新聞、雑誌などの活字メディアは極めて種類が多く、神奈川大学図書館と非文字資料研究センターが収集した資料だけでも、North China Herald、Far Eastern Review、長井暁寄贈資料(『支那事変画報』、『写真週報』等)、近藤恒弘コレクション(天津関連の絵葉書)、川合安平旧蔵の上海写真資料などその数は多い。本研究は、これらの活字資料の中に含まれている非文字メディア資料(写真、絵葉書、絵画など)を調査・研究し、展示、出版し、最終的には研究成果を社会還元することを目指す。

研究期間 2026年度~2028年度(3年間)

研究班メンバー

班代表(研究員) 孫安石
研究員 姜明采、彭国躍、村井寛志
客員研究員 飯塚靖、内田青蔵、大里浩秋、菊池敏夫、金鎭星
研究協力者 郭夢垚、北原糸子、田島奈都子、鄧桃香、冨井正憲、包慕萍
第4班 海外神社空間(祭祀空間)の景観変容と歴史化

第4班 海外神社空間(祭祀空間)の景観変容と歴史化

南山神社遺構調査(韓国・天安市)
永康三崁店糖廠神社遺構調査(台湾・台南市永康区)

共同研究の目的

COEから蓄積された海外神社及び首里城祭祀空間研究の成果を基盤に、本研究は、神社跡空間が各地域の社会環境の中でいかに歴史化され、景観・環境的に再編されてきたかを比較分析し、「ポスト海外神社空間論」の理論構築を目指す。海外神社は、現用性を失って80年を経て、象徴的転用、観光空間化、単純転用、僅かに残存する現用など多様な景観的再編を呈している。これは地域の社会構造や歴史的文脈を浮かび上がらせるマクロな比較視点と、地形・場所性との関係性を読み解くミクロな都市空間研究としての展開が期待される。
本研究では、既に解明済みの立地・空間構成データを基に、各地域の景観的再編に関わる非文字資料(写真・図像・地形図等)を中核に、文献資料との重層的分析を行う。視覚的情報を活用し、神社跡空間変容の景観・環境構造を把握する。また、「海外神社データベース」や収集済み一次資料の継承的分析を強化し、理論的裏付けの実証を図る。

研究期間 2026年度~2028年度(3年間)

研究班メンバー

班代表(研究員) 砂本文彦
研究員 後田多敦、角南聡一郎、道用大介、丸山泰明
客員研究員 小熊誠、加藤里織、坂井久能、嵯峨井建、菅浩二、津田良樹、中島三千男、前田孝和
研究協力者 稲宮康人、伊良波賢弥、松山紘章
第5班 非文字資料の研究とその成果の利用の過程における検索とマイニング、セキュリティ、著作権管理に関する研究

第5班 非文字資料の研究とその成果の利用の過程における検索とマイニング、セキュリティ、著作権管理に関する研究

只見町に収蔵されている民具
検索対象の只見町民俗資料調査カード

共同研究の目的

非文字資料の研究とその成果の利用の過程における情報の体系化と検索、新しい知見の発見およびセキュリティの確保と著作権の管理に機械学習やブロックチェーン技術などを適用し、研究者と利用者を支援するための基盤技術を構築する。

  1. 画像などのコンテンツを識別するための固有の情報の知覚ハッシュに基づく著作権管理システム
  2. 画像への電子透かしやステガノグラフィにおいて画質と耐性を両立した手法の構築
  3. 情報を体系化し関連付けを行うためにオントロジーとトピックモデルなどを組み合わせた検索手法や論文推薦システムや新しい知見の発見支援手法の構築と年報などの研究成果の動向の視覚化
  4. アクセス権の矛盾や情報間の推論に起因する情報漏洩を防止するためにトピックモデルを用いて非文字資料の文書間の関連性を抽出しアクセス制御に適用
  5. テクストに内在する潜在性を確率論的アプローチと決定論的アプローチの関連から捉える概念装置の研究

研究期間 2023~2026年度(4年間)

研究班メンバー

班代表(研究員) 木下宏揚
研究員 細野海人
客員研究員 佐野賢治、宮田純子、森住哲也
研究協力者 小松大介
第6班 「国策紙芝居」からみる大衆メディアの研究

第6班 「国策紙芝居」からみる大衆メディアの研究

インドネシアでつくられた紙芝居(NIOD所蔵)
台湾での「日本語世代」の方へのインタビューの様子

共同研究の目的

本班は2014年度の発足から12年を経て、この間、『国策紙芝居からみる日本の戦争』(勉誠出版、2018.3)、『国策紙芝居-地域への視点・植民地の経験』(御茶ノ水書房、2022.3)、『国策紙芝居からみる日本の戦争』続編(勉誠社、2026.3刊行予定)等の単行書を刊行したほか、海外(台湾、韓国、オランダ、インドネシア)を含む約40地点の地域で調査を実施し、『非文字資料研究センターNews Letter』に紙芝居作品の研究報告を掲載してきた。
紙芝居は、絵や台本だけではなく、声により演じられ、観客の反応によって成立するメディアである。したがって、紙芝居を研究するとは、紙芝居そのものの理解にとどまらず、非文字資料研究の手法を用い声や演じ方、上演の場、観客の反応と受容の過程を把握することが不可欠である。
また、本班では発足当初から、植民地や占領地の紙芝居とその上演と受容の問題を意識し、海外の研究者とも交流を重ねてきた。今期は、植民地や占領地の紙芝居研究についても、調査、研究の成果を一層積み重ねていきたいと考えている。

研究期間 2026年度~2028年度(3年間)

研究班メンバー

班代表(研究員) 新垣夢乃
客員研究員 大串潤児、森山優
研究協力者 小山亮、松本和樹、原田広、鈴木一史、富澤達三、邱昱翔
第7班 横浜の景観とその変遷-運河を中心にして

第7班 横浜の景観とその変遷-運河を中心にして

1975年に撮影された大岡川の景観(髙木フィルムより)
上段2枚:名古屋市中川運河の景観,下段2枚:神戸市新川運河の景観

共同研究の目的

本研究班では、2025年度まで運営されていた研究班「海とみなとの運河研究-横浜とアジアの運河」で蓄積された研究成果をより発展的なものとすることを目指す。具体的には、横浜の運河とその周辺領域との関わりを有機的に捉えつつ、運河の成り立ちや機能・特徴を明らかにしていく。研究に当たっては髙木幹朗研究室スライドフィルムや地図・浮世絵等の資料を積極的に活用し、また人文地理学・建築学・歴史学等の手法を用いつつ、かつ名古屋・大阪・神戸・韓国など横浜以外の地域の運河との比較も行いながら、多面的な形で運河をめぐる景観の理解を進めていくこととしたい。
先行する研究班の時期と合わせた6年間の研究成果は、一般を対象とした企画(街歩き・エクステンション講座)を通じて学外に発信し、かつ非文字資料研究叢書としてとりまとめる予定である。

研究期間 2026年度~2027年度(2年間)

研究班メンバー

班代表(研究員) 山口太郎
研究員 姜明采、中林広一
客員研究員 内田青蔵
研究協力者 金丸壽男、松本和樹
第8班  近現代日本の宿〈ヤド〉の体系化に関する研究

第8班  近現代日本の宿〈ヤド〉の体系化に関する研究

スキー旅館になった峠の宿場町の宿(新潟県湯沢町、1960年代後半頃撮影、丸山泰明氏提供)
秋田県横手市の駅前旅館跡(1967.8、川島秀一氏撮影)

共同研究の目的

日本における旅の大衆化は、街道と宿場が整備された江戸時代にその原型を認めることができる。近世の宿場機能や宿の種類などについては、ある程度まとまった研究成果の蓄積があるが、近代以降の宿については、西洋式のホテルの登場や展開について多少の成果があるものの、近世からのシステムの継承や変化を含めた体系的な研究はほとんどなされていない。鉄道の駅や、海外航路の発着点となった港などは、近代以降新たに形成された旅の拠点であり、そこに特徴的な宿泊設備が置かれていたが、その実像についても十分に記録されないまま、すでに姿を消したものが多くある。
本研究班では、近現代における日本の宿について、図像資料や体験談などの非文字資料から基礎的な情報を収集し、種類、立地、機能、特徴、変遷などを整理することをとおして、その全体像と構造的な把握を目標とする。また日本国内のみならず、近現代において日本人の海外での活動を支えた宿も視野に入れ、人の移動のダイナミズムを宿との関係から明らかにすることを試みる。

研究期間 2023~2026年度(4年間)

研究班メンバー

班代表(研究員) 山本志乃
研究員 丸山泰明
客員研究員 川島秀一、松田睦彦、趙怡、常光徹
研究協力者 岡田伊代、呉珂
第9班 語り物・演劇・物語との相互関係から読み解く絵画作品の諸相――絵馬・浮世絵・挿絵

第9班 語り物・演劇・物語との相互関係から読み解く絵画作品の諸相――絵馬・浮世絵・挿絵

国立国会図書館蔵『扁額軌範』より「牛若丸、僧正坊図」
初代歌川国輝画「仮名手本忠臣蔵十一段目」藤澤茜所蔵

共同研究の目的

日本の文芸や芸能・演劇などにおいては、文字(テキスト)だけでなく絵画が重要な役割を担っている表現が少なくない。しかし、それらに関する先行研究の多くは、絵画を副次的な位置づけにとどめており、その分析・解釈をへた考察は十分とはいえない。そこで本研究では、3年の研究期間のうちに、こうした絵画群にスポットを当てて、成立時期や個々の表現の特性に応じた研究方法の開拓を目指す。
具体的には、幸若舞曲や古浄瑠璃などの中世の語り物を題材とした絵馬、近世・近代の演劇が絵画化された作品やその継承、小説に付された表紙・口絵・挿絵など、文字(テキスト)と関係を持つ絵画を研究対象として、まずはそれぞれの実態について調査を進めていく。その上で、文字(テキスト)など芸術作品以外の要素と絵画の関係性、絵画それ自体の分析・解釈をへて、その意味(作用)について考察し、絵画作品へのアプローチ方法とその留意点をまとめる。

研究期間 2026年度~2028年度(3年間)

研究班メンバー

班代表(研究員) 松本和也
研究員 粂汐里、藤澤茜
第10班 非文字資料を問い直す -非文字資料をめぐる可能性と課題

第10班 非文字資料を問い直す -非文字資料をめぐる可能性と課題

 

共同研究の目的

本研究班では、非文字資料そのものを対象として、それを捉える視点の共有を図ることに目的を定める。本センターは20年にわたる活動実績を持つが、今なお非文字資料に関する定見を得るには至っていない。その理由としては、その定義や研究範囲・研究方法等の明確化が困難である非文字資料そのものの性質が挙げられ、また非文字資料に対して個々の研究者の間で生じている理解のズレも重視される。
本研究班では、こうした現状に鑑み、改めて非文字資料とは何か問い直し、そこでの議論を通じて参加者間の理解を照らし合わせる機会を設けることとしたい。作業は非文字資料にまつわる理解の精緻化をもたらし、また従来手のつけられることのなかった領域へと研究が進展することも期待される。
以上の目的の下で本研究班は活動を行うが、具体的には研究会の場にて研究員間での議論に加えて、積極的に講演会の企画・運営を行う予定である。多様なテーマ・トピックによる講演会を開催することで、参加者の間で充実した議論がなされ、非文字資料に対する知見の共有とその深まりが見込まれる。

研究期間 2026年度~2027年度(2年間)

研究班メンバー

班代表(研究員) 中林広一
研究員 熊谷謙介、後田多敦
第11班 中国及び近隣文化圏における近世以降の諸資料と「身体」

第11班 中国及び近隣文化圏における近世以降の諸資料と「身体」

河鍋暁斎「東京開化名勝 浅草奥山花屋鋪植木家六三郎底内清人羅雪谷仮寓居之図」
内閣文庫蔵本『唐土名勝図会』巻三、清代京師(北京城)灯市口大街図

共同研究の目的

古来中国では膨大な「文字/非文字資料」が作成・受容されてきた。その要因の一つには、当該地域に生きた人々の「現実」の「記録」に対する熱意があるとも指摘されるが、時代を経るごとにその熱量は、表現者や受容者の内的・外的世界の「描写・表現」自体へと向けられる側面も強くなっていった。「現実」と表裏一体の「虚」の世界の拡大である。
この「虚」の世界は、特に近世以降に、戯劇、講釈、小説ほか身体要素の強い「俗」文芸・文化が急速に台頭すると、「正統」詩文にも内容理解を視覚で促す挿画が付加されようになるなど、身体性を一つの軸足として多様な展開を見せるようになる。さらに、そこで表象される身体性は、例えば「水滸もの」演劇・文芸が実社会の複数の反乱の動力となったように実社会をも動かしてきた。
本研究班ではこの点に着目し、近世以降の中国及びその近隣文化圏の日本で作成された戯曲・小説・詩文等古典籍の挿画や、絵画・版画、伝統演劇、語り物文芸といった、「虚」の世界で表現される「身体」に纏わる諸事象を分析する。これにより大きくは、「虚」の世界の身体性が、中国や日本等の実社会に与えた影響の諸相の一端を明らかにする。
具体的運営は、年数回の研究会での各研究者の発表、議論などを基礎とし、その成果を講演会やシンポジウム等で共有・周知していく。

研究期間 2025~2027年度(3年間)

研究班メンバー

班代表(研究員) 松浦智子
客員研究員 大木康、吉川良和、樊可人、鈴木陽一、田村容子、八田真理子
準備班 1970年代末から2000年代にかけての毎日放送におけるテレビ番組制作と大衆文化・芸能の交雑——高垣伸博の仕事を中心に

準備班 1970年代末から2000年代にかけての毎日放送におけるテレビ番組制作と大衆文化・芸能の交雑——高垣伸博の仕事を中心に

毎日放送の社屋(大阪、茶屋町、2026年4月撮影)
高垣伸博氏(2026年3月撮影)

共同研究の目的

演芸番組を中心に多種多様な番組制作を行なってきた高垣伸博氏(毎日放送元ディレクター/プロデューサー、元アナウンサー室室長)の活動を調査し、1970年代末から2000年代にかけての、在阪テレビ局の具体的な制作状況とその文化的動態の一端を明らかにすると同時に、戦後視覚文化と落語等の芸能をはじめとする上方大衆文化との関係性を検討する。主たる研究方法は、聞き取り調査による一次資料の収集、制作された番組などの視覚資料の具体的分析、また、江戸演芸との比較などを通じた演芸自体の分析である。聞き取り調査の内容は、論攷と併せて出版する。なお、本研究は、「芸術表現における声と身体をめぐる基礎的研究―舞台芸術・古典芸能・現代美術」班において、申請者が行なった調査の一部を継承展開させたものである。

研究期間 2026年度(1年間)

研究班メンバー

班代表(研究員) 水川敬章
研究員 大島希巳江
客員研究員 広瀬依子