特色のあるコレクション

中国文化大革命ポスターコレクション

1. 背景

1950年―1970年代にかけた東西冷戦の時代にアメリカ、ソビエト、中国では「人民」にわかりやすい政治宣伝を展開することを目的に大量の芸術作品(音楽、美術、舞踊、映画など)が動員された。その中でも最も大きな効果を期待されたのがポスターである。アジアでは、中国と台湾、北朝鮮と韓国の間で激しい政治体制の競争が繰り広げられたため、とくに多くのプロパガンダ作品が作成されたといわれている。中でも、中国では1966年~1976年の文化大革命という「動乱」を経験する中で、「美帝」(アメリカ帝国主義)に対抗する共産党と毛沢東を賛美する多くの政治ポスターが制作され、実際に「日常生活」と「労働」の現場で消費された。

2. 世界と日本のポスターの所蔵

これらのプロパガンダ・ポスターに関連する体系的な研究を目指すべく、(1)オランダのUniversity of Amsterdam, Leiden Universityに Stefan R. Landsberger教授による「Chinese propaganda posters コレクション」(約2800枚)があり、(2)中国では、上海宣伝画芸術中心(shanghai propaganda poster art center)が約6000枚を所蔵して、多くの関心が集まっている。

最近ポスターは、とくに現代美術と「ポップアート」の方面からも注目されているが、日本ではまだ体系的で組織的な収蔵は見られず、多摩美術大学の秋山孝氏による収集が一部、「秋山孝ポスター美術館」(長岡)に引きつかれていることが知られるのみである。

3. 神奈川大学とポスター研究の可能性

今回、非文字資料センターが寄贈を受けた文化大革命ポスターは、点数として約200点と多くはなく、世界のレベルに及ばないが、図像研究をめざす非文字資料研究センターが今後中国の図像資料を収集・研究するきっかけになることは間違いない。さらに、神奈川大学図書館には中華人民共和国建国以来の対外宣伝を担った『人民画報』、『人民中国』等を数種所蔵しており、これら雑誌資料を文化大革命ポスターと並行して利用すれば、非文字資料センターの特色ある研究テーマとして育てていくことは可能である。

近藤恒弘コレクション

収集の動機

近藤恒弘氏は1929年に天津で生まれ、幼稚園、小学校を過ごし、天津日本中学校の4年生の時に終戦を迎えた。翌1946年に日本に引揚げ、その後毎年中学のクラス会を開いてきた。2002年には天津でクラス会を開くことが企画され、近藤氏が幹事を引き受けることになった。その際、近藤氏はガイドブックを作成しようと考え、天津に関する資料を集め始めたのが収集のきっかけである。それから12年の間に、絵葉書だけでも1000枚を超すコレクションとなった。

収集の経過

資料は、近藤氏の思い出に関係するものが重点的に収集された。日文、中文を問わず、地図、写真集、絵葉書、個人の写した写真、案内書、電車の切符、関連書籍などである。近藤氏は、収集した資料を、毎年開かれるクラス会などで回覧したり、コピーを配布したりすることに意義を感じていたという。当初、絵葉書に関しては系統的な分類はせず、増えるに従い地域別の分類をしていたが、その後、独自の工夫がなされた。発売元により微妙に風景が異なることから、業者別の分類や、宛先面の印刷の違いによる分類が採用された。そうすることで、様々な事柄が徐々に解明されてきたという。例えば、写真集に絵葉書と同じ写真が使用されている場合は写真集の発行年月を絵葉書の年代特定の参考にしたり、年代別の地図から建物等の状態を判別したり、葉書にある道路や建造物の状態から年代を判別するなどである。

近藤恒弘コレクションは、天津で生まれ育った近藤氏が収集した網羅的な資料群であり、非文字資料研究センターの貴重なコレクションとなっている。現在、センターの研究班により、様々な角度から研究の対象とさており、今後の研究成果が大いに期待されるものである。

※上記の文章は、2013年度第3回公開研究会における近藤恒弘氏の発表原稿に加筆修正を施したものである。

戦意高揚紙芝居コレクション

紙芝居は、絵巻物・のぞきからくり・うつし絵・無声映画の活弁など、<見ながら話を聞く>という日本の視聴覚文化の伝統のもとにあるとされている。1950年代中盤以降、家庭へのテレビの普及にともない街頭から徐々に姿を消したが、戦前・戦後の興業ピーク時には、東京だけで一日に100 万人の観客(子ども)を集めていたと言われている。しかしまた、新聞・ラジオ・映画と並ぶ教化性の高い大衆メディアであった紙芝居は、15 年戦争に突き進んだ大政翼賛時代の言論統制下において、例外なき戦争プロパガンダの一翼を担うこととなった。この時期に制作された一連の印刷紙芝居は「国策紙芝居」と呼ばれるが、敗戦から占領に至る期間に多くが焼却され散逸した。本センターが収集した「戦意高揚紙芝居コレクション」は、主に1941 年から1949年の間に日本教育畫劇(1938 年結成日本教育紙芝居協会の紙芝居出版機関)から刊行されたものを中心とした241 点によって構成されている。旧蔵者は、『戦争と紙芝居』などの著作において、一貫して、戦時下の諸メディア・諸団体の動向と文化人の戦争責任に係る資料を発掘してきた櫻本富雄氏である。

神奈川大学放送研究会の学生諸君の協力を得て、音声データの収録も進めている。下記タイトルは、紙芝居画像に加えて音声データも公開したタイトルである。