1. 生活絵引編纂共同研究
生活絵引編纂共同研究の下に、A 『マルチ言語版絵巻物による日本常民生活絵引』 編纂共同研究、B 『日本近世生活絵引』 南島編編纂共同研究、C 『ヨーロッパ近代生活絵引』 編纂共同研究、の三つの共同研究を組織し、「絵引」という世界的に類のない図像資料の情報化方式を推進し、絵引の編纂をとおして非文字資料研究センターを世界的な研究拠点とすることに貢献する。
本センターの共同研究の軸となる生活絵引編纂共同研究の総括には,田上繁センター長が当たる。
A.『マルチ言語版絵巻物による日本常民生活絵引』編纂共同研究
共同研究の目的
『マルチ言語版絵巻物による日本常民生活絵引』全5巻のうち、21世紀COEプログラムにおいてVol.1/ Vol.2を、センター第一期共同研究においてVol.3刊行した。本研究の目的は、3年後を目途に、完訳版全5巻を刊行することである。これをとおして、海外において、歴史・民俗学・人類学・文学など、様々の分野の方々が日本の「常民生活」のあり様を参考にしてくれることを期待している。
共同研究の分担
研究代表者 | ジョン・ボチャラリ |
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共同研究者 | クリスチャン・ラットクリフ |
研究協力者 | 何彬、 君康道、 徐東千、 中井真木、 李利 |
B.『日本近世生活絵引』奄美・沖縄編編纂共同研究
共同研究の目的
『「南島雑話」以前の近世奄美の習俗を描いた絵巻「琉球嶌真景」、琉球本島関係では「琉球進貢船図屏風」と「近世琉球風俗絵図」、そして八重山の「八重山蔵元絵師画稿集」を対象として、近世琉球地域における風俗絵図を研究し、その絵引き作成する。
なお、本研究班の名称は『日本近世生活絵引』南島編編纂共同研究として発足したが,「南島」という表現は自然地名や行政地名でもない抽象的表現であること,「南島」より「奄美・沖縄」とした方が具体的で且つ本センターが編纂する絵引の実態に即していることなどから、2013年度より『日本近世生活絵引』奄美・沖縄編編纂共同研究に変更する。
共同研究の分担
研究代表者 | 小熊誠 |
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共同研究者 | 渡辺美季 |
研究協力者 | 田名真之、得能壽美、富澤達三、豊見山和行、 真栄平房昭、川野 和昭、本村育恵 |
C.『近代ヨーロッパ生活絵引』編纂共同研究
共同研究の目的
18世紀にヨーロッパ広域で描かれるようになった風俗画(広義)を資料として、都市民の生活を中心に社会史的・比較文化的視角から編集・解説を試みる予定である。今期末に18世紀ヨーロッパ(仏・独・伊・英語圏)に関する生活絵引(全2巻の予定)の第1巻を刊行する計画である。
共同研究の分担
研究代表者 | 鳥越輝昭 |
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共同研究者 | 小松原由理、 熊谷謙介、 ステファン・ブッヘンベルゲル |
研究協力者 |
2.東アジアの租界とメディア空間
共同研究の目的
中国・朝鮮における旧日本租界の歴史と現状を様々な角度から調査・研究してきた本センター第1期共同研究の取り組みを継続して行いつつ、戦前の中国・日本・朝鮮に設置された租界(租借地・鉄道附属地を含む)、居留地の比較研究を行う。また、租界が存在した同時期に中国・朝鮮で出版された日本語の新聞・雑誌等を取り上げることで、現地で形成された日本人のメディア空間の実態を明らかにしたい。
報告書を公刊する。
具体的には、租界で発行された画報(Illustrated Magazine)—『良友』画報、北洋画報、『キング』、North China Daily News paper、『大陸新報』、『大東亜画報』などに掲載されている写真、図像資料の比較と検討を行う。
以上の内容について、関連資料の収集に努めながら、資料の読み合わせと外部の研究者を招いての研究会を適宜開くとともに、年に1、2回、中国か韓国および横浜で公開研究会を行うことで、研究成果を学内外に広く伝え、かつ、成果報告書を公刊する。
共同研究の分担
研究代表者 | 大里浩秋 |
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共同研究者 | 内田青蔵、 金容範、 孫安石、 村井寛志 |
研究協力者 | 栗原純、 吉川良和、 冨井正憲 |
3. 海外神社跡地から見た景観の持続と変容
共同研究の目的
戦前期において大日本帝国は海外に獲得した植民地に神社を創設した。それが海外神社であり、その数は2000箇所ともいわれている。敗戦とともに、ほとんどの神社は破壊されたが、未だに遺構を残しているものもある。
神奈川大学21世紀COEプログラムの共同研究(第3班・課題3)として、「環境に刻印された人間活動および災害の痕跡解読」に取り組むなかで「海外神社(跡地)調査データベース」を構築し、公開した。さらに非文字資料研究センターに移行してからも、毎年このデータベースの増補改訂を続けている。また、このデータベースの成果を基盤として、在野の研究者なども含めた「海外神社研究会」を立ち上げ、研究会を継続している。
本共同研究は、この「海外神社研究会」を母体として、景観の持続と変容の観点から、海外神社跡地の現地調査を行い、海外神社のかつての様相、および戦後の持続と変容について実態解明することを目的とする。それぞれの海外神社(跡地)の実態解明することのなかから、海外神社研究の総括が見えてくるのではないかと考えている。
共同研究の分担
研究代表者 | 津田良樹 |
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共同研究者 | 泉水英計、 中島三千男 |
研究協力者 | 稲宮康人、金子展也、辻子実、渡邊奈津子 |
4. 水辺の生活環境史
共同研究の目的
本共同研究は、河口部に見られる汽水域を生活の場とする人々の生活文化について環境史の視点から究明することを目的とする。同時に、非文字資料研究としてのオーラルヒストリーおよび生活環境史の手法を開拓する。具体的には、大きく2つのテーマから上記の問題に迫る。
(1) 水上生活者の歴史的変容 江戸時代、日本列島には陸に家を持たず水上で暮らす「家船(えぶね)」という生活形態があった。近代に入っても、さまざまにその様態を変えながら水上生活者は各地に存在した。研究対象地として北九州の洞海湾を取りあげ、八幡製鉄所の発展に伴う石炭輸送の担い手として登場した水上生活者の推移と、洞海湾の環境・景観の変化を追究する。現地調査においては水上生活体験者の口述資料や写真・映像資料の収集を行う。
(2) 汽水域の民俗文化 日本列島の場合、河口部や潟湖・内湖といった沿岸環境の多くは淡水と海水が入り交じる汽水域となり、そこには独特の民俗文化が形成されてきた。たとえば、淡水魚とともに海水魚も棲息する汽水域では独特な漁労技術や低湿地農耕が発達する。また、そこは海から河川への荷の積み替えがおこなわれるなど、水上交通の要地ともなっている。こうした汽水域独特の文化要素を繋ぎ合わせ、日本列島の生活環境史研究として総合化し、新たな視点に立った「汽水文化」を提唱する。
共同研究の分担
研究代表者 | 安室知 |
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共同研究者 | 川島秀一、 田上繁、 森武麿 |
研究協力者 | 常光徹、藤川美代子、松田睦彦、山本志乃、若宮幸一 |
5. 非文字資料の効率的な検索と安全な流通
共同研究の目的
本共同研究は、非文字資料を研究者間および専門家以外の人との間で情報の提供、共有などを行うために必要な基盤技術を構築し、実際の資料や研究者などを対象とした実証システムにより、その有効性を検証することを目的とする。
上記の目的達成に必要な基盤技術の提案を行い、その後、只見民具カードを対象に基本的なシステムを構築する。
最終的な成果目標は下記の通りである。 (1) 非文字資料に特化したオントロジーを構築し精度の高い検索と新しい知見のマイニングを行うシステムを構築する。(2) 非文字資料のオントロジー構築、検索などに適したユーザインタフェースを 構築する。(3) 非文字資料の検索、流通時に個人情報や機密情報を保護し、著作権の調停を 自律的に行う流通システムを構築する。 (4) 非文字資料の資料の作成、データ処理、資料の流通などを円滑に行うために 地域通貨的決済手法を提案する。(5) 非文字資料とことば工学のコラボレーションおよび非文字資料からの会話文 生成システムの提案を行う。
共同研究の分担
研究代表者 | 木下宏揚 |
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共同研究者 | 佐野賢治、 能登正人、 松澤和光 |
研究協力者 | 小松大介、 鈴木一弘 |